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アソシエイトレポート 2026年4月

エジプトの観光

岩田 章一
(本文は2025年12月に寄稿されたものを掲載しています)

エジプトと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのはピラミッドではないでしょうか。カイロ郊外にあるギザのピラミッドとスフィンクス、ナイル川、ルクソールの壮大な遺跡群などの世界遺産に多くの観光客が訪れ、その収入によってエジプト経済は潤っているっと、私はそう思い込んでいました。

実際、観光地には国内外から多くの観光客が集まり、少しでも多くの支出を引き出そうとする観光ビジネスが展開されています。貧乏旅行者の私には少々「しつこい、うざい」と感じることも多く、観光への関心も薄くなり、観光地に行くなら家でまったり過ごすのが好きになり、そんなインドアの寂しいエジプト生活を送っています。

先日、あるセミナーでエジプトの経済構造について学ぶ機会がありました。そこで知った現実は、私の想像とは大きく異なるもので、自分がいかに表面的なステレオタイプの無知なオヤジだったかと反省させられました。

エジプトのGDP構成を見ると、製造業と小売業が約30%とトップ2を占め、さらに農業、不動産、サービス業、石油・ガス採掘、建設業などが約45%と、これらの業種でほぼ成り立っています。「エジプト経済を支えているのは、先祖が築いた遺産を活用して楽して食ってる観光業だろう」と勝手に思い込んでいたのですが、観光業が占める割合はたったの3%程度でした。

その結果に少し興味を持って観光客数を調べてみると、2023年のエジプトへの観光客は約1,400万〜1,600万人とされています(※出典には多少のばらつきがあり)。さらに、ギザのピラミッドの訪問者数もほぼ同程度とされ、「エジプトを訪れる人のほとんどが、ピラミッドを見に行く」という注釈もあり、ピラミッドがなかったらエジプト観光はどうなるんだろうって考えさせられます。

ついでに世界の観光関係もちょっと調べたら、2023年には世界全体で約13億人が観光旅行をしています。訪問者数の多い国は、1位フランス(約1億人)、2位スペイン(約8,500万人)、3位アメリカ(約6,600万人)。その後は、イタリア、トルコ、メキシコが続き、日本は約2,500万人で15位。エジプトは21位と日本に来る観光客がエジプトより多いのも意外でした。

もう一つ面白かったのは、観光収入の順位が必ずしも訪問者数と一致しない点でした。観光収入では、訪問者数3位のアメリカが1位、2位スペイン、3位イギリス、4位フランスとなっています。日本は10位、エジプトは29位でした。滞在日数、物価や消費単価などの違いも影響しているのでしょうが、アメリカの稼ぐ観光と、エジプトの収益性の低さを比べると、観光業のGDP比率が低い理由も少し見えてくる気がします(データの正確性には若干の疑問も残りますが……)。

もう一つ不思議だったのがサウジアラビアです。訪問者数は約2,700万人で13位、観光収入も同じく13位。あの外国人受入に厳しい、超保守国家なのに「本当だろうか?」と思いつつも、メッカ巡礼に訪れるイスラム教徒が、確実にお金を落としていく構造を考えると、妙に納得してしまいました。

皆様、良い年をお迎えください。

ナイル川(カイロ)
道端から見えるピラミッド